2020年9月9日水曜日

マキタ Makita 互換バッテリーについての考察

以前マキタの互換バッテリーについて書いた

噂によると今のマキタの純正バッテリーはVTC5AとかVTC5Dという凄まじい放電特性を持っているバッテリーを使用しているらしいので、充電も放電もかなりの電流が流せるようになっている。
たしか、*マーク無しのBL1860はVTC6だった筈だ。機会があれば*マーク付きのバッテリーもバラシて中身を確認してみたいと思う。
純正バッテリーをバラせば、決して暴利で売っているのでは無いとわかる(定価は高いけど実売はBL1860で1.3万円ぐらい)。
バッテリーセルは言うまでもない。IMRの18650で大電流対応の物の値段を調べてみれば分かると思うが、一本千円だとしても10本入っているので、それだけで1万円だ。
バッテリーコントロール基板が入っていて、セル毎の電圧監視、温度監視、終止制御、充電回数記録が行われている。
でもって、そのコントロール基板は防塵防滴処理されていて、基板が透明の樹脂のような物で覆われているので、水没でもしない限りは安心して使えるだろう。
バッテリーセルを繋ぐニッケル板は大電流に耐える比較的厚めの物が使われていて、スポット溶接も接触面積が多く強固な溶接となっている。

そんなわけで、純正バッテリーの値段は妥当だと考えられるし、仕事で道具を使っているなら、リスクのある互換品を使わない方が良いのは間違いないだろう。
しかし、世の中、職人ばかりではない。特にマキタはDIY市場にも広く販売しているのだ。
素人はその道具を使って稼いでいる訳ではないのだから、純正の半額以下で売られているバッテリーがあるなら、それを使いたいと思うに決まっている。

なので、互換バッテリーを使う上で、なるべくリスクを避ける為にも理解を深めたいと思う。

まず、ショボい互換バッテリーを高出力系で使うと、内蔵されているセルの定格放電出力の限界付近で放電されるので、バッテリーがそれなりに発熱する。
実際ダイソンの掃除機のバッテリーは使用中でもそこそこ熱をもつ。個人的にはダイソンのバッテリーの使い方は純正バッテリーでもかなり厳しいと思う。
ただ、放電の場合は過放電でセルが壊れる事はあるだろうが、熱で配線が溶けてショートでもしない限り電池が燃える事は無いだろう。

問題は充電だ。
マキタの純正充電器は純正バッテリーの性能を容赦なく使うような設計になっているので、DC18RCで最大9A、DC18RFで最大12Aというかなり大きい電流で充電するようになっている。
全ての電流がバッテリーに流れる訳では無いだろうが、2本並列の5組直列(5S2P)でも1本あたり4.5A。となると、VTC5D(2800mAh)でも1.6Cでの充電となる。
高出力対応のVTC5Dでもそれなりに発熱するような電流で充電するので、充電器側にバッテリーを冷却する為の電動ファンが付いている。
なお、VTC6は仕様上では連続最大充電電流5A(パルスだと6A)となっているので、5S2Pを9A充電であれば仕様内となっている。ただし12A充電は充電の仕方によっては際どい。

充電時間をカタログスペックで見てみると、純正充電器DC18RCで充電した場合、6.0Ah:55分、5.0Ah:45分、4.0Ah:36分、3.0Ah:22分、2.0Ah:24分、1.5Ah:15分となっている。
最新のDC18RFだと6.0Ah:40分(フル)※、27分(実用充電80%)※、5.0Ah:40分(フル)、4.0Ah:29分(フル)、3.0Ah:22分(フル)、17分(実用充電80%)※、2.0Ah:24分(フル)、1.5Ah:15分(フル)だ。
バッテリーケースの形状から想像するに、BL1815とBL1820は5S1P接続、他は5S2P接続だと思う。
いずれにしても、急速充電に対応したセルでなければ耐えられないような充電電流だろう。
純正充電器の充電制御は皆あまり興味が無いのか、純正バッテリーを破壊してまで測ろうという強者はいないようで、ネット上でデータを見つける事はできなかった。

互換バッテリーは実際に中身を見てみないとわからない場合が多いが、ちゃんと作っている物であれば、純正充電器でもなんとか使用に耐えうる。3000mAhの電池を3本並列接続であれば9A流しても1セル当り1C充電なので、標準的な充電電流となるからだ。
ちなみに先にも書いたがVTC5AやVTC5Dとバランス充電基板付きのケースを買ってバッテリーを自作しようとすると、純正バッテリーのBL1860Bが買えてしまうぐらいの費用がかかるので、趣味以外ではお勧めできない。

で、中華の容量詐称バッテリーを純正充電器で充電すると、どうなるかというと、バランス充電基板が入っていない物は、バッテリーのセルが死ぬか、炎上する。
殆どの場合セルが死んで充電器が異常を検知し、充電が止まるのだけれど、充電が止まらずに火災になるケースが頻発しているようだ。
制御基板が入っているタイプは、少しは安心して使えるだろうか。
たまたまセルの品質が良く、規定電流以上の充電電流に耐えられたとしても、確実に寿命は縮んでいるだろうし、セル間の電圧バランスはかなり怪しい事になっている筈だ。
制御基板無しの互換バッテリーを純正充電器で充電する場合は、ほぼ満充電の状態の物に追い充電するようにすれば、CC充電が極短時間で終了し、CV充電に移行するだろうから、少しは壊れにくいかもしれない。

互換バッテリーに内蔵されるコネクター基板だが、無制御タイプの基板がコレ


で、充電制御タイプがコレ

見れば分かると思うが、無制御タイプは温度しか見ていない。
制御基板も今後はフェイク基板が出てくるかもしれないので参考にしかならないが…
まぁフェイク基板だとしても電極がケーブルでは無く、ニッケル板で接続されているだけでも安心感は高いかもしれない。
無制御タイプのケーブルの細さは大電流を流すには不向きだ。 充電の9Aはまだしも、放電で数十Aを連続して流せるようなケーブルではないと思う。

今のところ国内で販売している互換バッテリーで制御基板が入っている物を見たことが無い。もし制御基板が入ってたら、売り文句に写真を載せてくるだろうから、売ってないんだろうなぁ。たぶん。
制御基板入りはAliExpressで購入可能ではあるものの、電池容量詐称で6Ahが4Ahだったりするし、送料が高いので微妙なのだ。
制御基板とケースのキットも販売されているが、そこそこの値段だし、安心して使えそうなセルを購入すると、結局、高級な互換バッテリーを買うのと同じぐらいの金額になってしまう。

で、結局互換バッテリーの充電はどうするかというと、小電流でゆっくり充電するのがベターだろう。
といっても現在販売されている純正充電器であれば「DC18SD」もしくは、適当な互換充電器に頼るしかない。しかし、敢えて充電性能の低い「DC18SD」を5千円以上出して買うのか?という話なんだよなぁ…

取り合えず、互換バッテリーを購入したら、まずは分解。基板とセルを確認。
セルの容量が小さく、基板が無制御タイプなら負荷の小さい物向けで使用。
制御タイプならセルの性能次第で充電器と用途を使い分けるような感じだろうか。
基本的には1C以下で充電できるような充電器ベターだと思う(そもそもセルのスペックシートを見ると1Cどころか1A充電と書かれている物が多い)。
小電流でゆっくり充電すれば、バランス充電回路が無くても、セルに問題が無ければ、ある程度は勝手にバランスする。
小電流充電であれば、CCCV充電のCC充電領域だけで完結するような充電器のほうがバッテリーの寿命は延びるかもしれない。完全な満充電はできないかもしれないが、過充電でセルを壊す確率は低くなるだろう。

とにかく、中身が酷い互換バッテリーでも購入当初は問題なく使用できるだけに質が悪い。
そこそこまともな互換バッテリーは純正に比べれば安価ではあるものの格安では無いので、微妙なところだと思う。
国内で互換バッテリーを販売している業者は、自らが販売しているバッテリーの分解写真は載せないし、公表もしないから、結局買ってから自分で調べるしかない。
純正と同等の互換バッテリーを作ろうと思ったところで、相当するセルが安価で売っている訳もなく、コスト的に難しいのだから、どうやっても純正同等品は無理筋だろう。
ただし小電流(といっても1セル辺り10A~15Aぐらいは流せる)用途であれば純正セルよりも高容量のセルが存在するので、それなりのセルを使っているバッテリーであれば用途は広がる。

したがって、やはり問題は充電だろう。
直列に繋がれたプロテクター無しの18650を充電する上でバランス充電回路が無いのは危険だし、そこに定格以上の急速充電をするとか、そりゃセルも死ぬし燃えるに決まっている。
PSEマークがどうとか書いているショップも多いが、バッテリーの故障や炎上は充電器や制御回路込みの話なので、まったく話にならない。
安い互換バッテリーを分解したら、大抵制御回路無しの基板で、せいぜいセルの温度監視しかしていない。
PSEマークが付いていようが、付いて無かろうが、悪条件が揃えば簡単に壊れるし、燃える。

こんな中学生理科程度の知識とネットに転がっている資料や情報だけで想定できるような事をショップが知らない訳がないので、クレームを入れても無駄だし、持病と同じでうまい事付き合っていくしかない。

丸のこやグラインダーみたいにモーターがぎゅんぎゅん回るような工具や純正充電器の性能をフルに生かしたければ、純正バッテリーが最もコストパフォーマンスが高いし、安心して使える。
インパクトみたいに間欠動作させるような用途や、そこまでパワーに拘らない掃除機のような用途であれば、使用時間やコスパ重視で互換バッテリーも十分に使えると思う。
バラして中身が糞バッテリーだった場合はワークライトとかラジオとか扇風機なんかに使えば良いかもしれない。

いずれにしても、コントロール基板が入っていない互換バッテリーを使う際は、電池を最後まで使い切らない事が肝要だ。
互換バッテリーでプロテクター入りのセルが使われる事はまず無いので、セルの放電終止下限電圧を下回っても、電流を流してしまうから、過放電になってバッテリーの寿命を著しく縮めるか、壊れる。
「もうちょっと使えるかなぁ」と思わず、余裕があるうちに充電する必要があるので、常に予備バッテリーは用意しておいた方がいいだろう。
ただ、ワークライトやラジオなんかはバッテリーが過放電状態になっていても分かりにくいので、使ったら充電するぐらいの感覚で良い。
あと、充電器にバッテリーを挿しっぱなしも危険だ。中華製のコストカット互換充電器に信頼性を求めてはいけない。

そんなわけで互換バッテリーを使う人はバッテリーケースを開けるためのT-10ドライバーや細径の2番+ドライバーは必携。
バッテリーの素性を確認した上で、できるだけ安全に使おう。
バッテリーケースの分解や組立はショートには十分に気を付けて実施する事。
何も考えず、リスクもとらず、手間も暇もかけたくないなら、安心安全の純正バッテリーを使おう。中身を知れば、決して高いモノではない。用途によってはオーバークォリティーなだけで。

 

 

 

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